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これはつまり積極的な意味での三国間進出ではなく、当面の過剰船腹を三国間に廻し調整するもので、先述のケープサイズのトレードパターンや、木材チップ専用船での東南アジア/欧州のタピオカ輸送などにその例がみられる。
もちろん、日本海運でも純粋の三国間輸送に参入し、日本カーゴを離れて活躍しているものも数多くあるが、比率的には少なく、実質的な日本商船隊による純粋三国間の積取り比率は数%あたりではなかろうかと推測される。

 

日本海運の環境変化と対応
さて、昨今の円高と、冷戦終結に伴う市場経済化の流れは、日本経済に価格破壊と産業の空洞化現象をもたらし、日本海運も自らのコストのドル化、コスト削減の推進はもちろんながら、物流の構造変化への対応、加えて荷主よりのなお一層のコスト削減要求に応ずるための同際競争力の確保が緊急の課題となっている。
日本海運が今まで大きく依存していた日本発着カーゴの伸び悩みあるいは減少によるパイの縮小、加えて国内各産業がそれぞれの国際競争力確保のために厳しい物流コストの削減要求を出して来ている。
今までも日本海運はつねに国際競争力の確保を図ってきたが、従来は日本経済の発展、拡大のなかで、規模の拡大という方法でかなりの部分が対応出来たが、今後はそれは極めてむづかしく、また高度成長期にうけたようなコスト積上げベースでの専用船契約の成約は困難となりつつあり、必然的に各々がコスト削減の厳しい競争に進む他に道はない。
一方、物流の構造的変化への対応は、新しい物流の流れに沿った営業体制の構築であり、とりわけ経済発展の著しいアジア海運市場への積極的な参入が急がれる。そして、その際には従来の日本海運が持っていた三国間輸送のやり方、考え方を大きく変えるような発想が求められよう。

 

日本海運の三国間輸送への新しい展開
成長の著しいアジア経済の発展は、アジアには巨大な海運市場を形成しつつあり、近い将来、不定期船分野においても、同地域の経済発展にともなって原燃料等バルクカーゴでの輸送需要が大きく増大することは間違いない。
幸い日本海運はそれらの発展地域と、地理的にも歴史的にも近い関係にあり、日本海運が我が国の経済発展に大きく寄与したように、今度はその地域の円滑な経済発展に貢献出来るよう、共存共栄の精神で取組むべきであろう。
従来日本海運にとっての三国間輸送は、日本カーゴが主であり、三国間カーゴは、日本カーゴのためのコンバイントレードという色合いが強かったが、今からの三国間輸送はそれとは違った視点で取組むことが必要であろうし、とりわけ厳しい条件のもとでの営業展開になることは間違いないと思われる。まさに脱日本的な経常の発想が必要とされよう。
ただ、永年にわたってつちかってきた日本海運の海陸それぞれのノウハウや経験が、良質で競争力のある輸送サービスの提供に寄与し、安全輸送、環境保全に役立つよう努力したいものである。
日本海運にとって、その三国間輸送への進出は、真の同際競争力を持った日本海運への脱皮であり、そこに初めて新しい日本海運の将来があらわれて来よう。

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